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名古屋高等裁判所 平成6年(行コ)6号 判決 1994年10月26日

愛知県尾西市起字堤町七〇番地

控訴人

駒興産株式会社

右代表者代表取締役

中島喜一郎

右訴訟代理人弁護士

酒井俊皓

愛知県一宮市栄四丁目五番七号

被控訴人

一宮税務署長 太田克

右指定代理人

泉良治

佐野明秀

鈴木幸雄

種村敏

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

控訴人は、

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人が控訴人に対し昭和六一年一〇月二四日付けでした昭和五七年一〇月一日から昭和五八年九月三〇日までの事業年度以降の法人税の青色申告承認取消処分を取り消す。

三  被控訴人が控訴人の昭和五七年一〇月一日から昭和五八年九月三〇日までの事業年度の法人税について昭和六一年一〇月三一日付けでした更正及び過少申告加算税賦課決定(いずれも昭和六二年三月二七日付け異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。

四  被控訴人が控訴人の昭和五八年一〇月一日から昭和五九年九月三〇日までの事業年度の法人税について昭和六一年一〇月三一日付けでした更正及び重加算税賦課決定(いずれも昭和六二年三月二七日付け異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。

五  被控訴人が控訴人の昭和五九年一〇月一日から昭和六〇年九月三〇日までの事業年度の法人税について昭和六一年一〇月三一日付けでした重加算税賦課決定を取り消す。

六  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

との判決を求めた。

被控訴人は、控訴棄却の判決を求めた。

第二事案の概要

本件の争いのない事実等並びに争点及びこれに関する当事者の主張は、次のとおり付加するほか、原判決事実及び理由欄の第二に記載のとおりであるからこれを引用する。

(控訴人の当審付加主張)

一  取締役中島満寿の退職金について

事業年度の途中で役員が退職した場合、退職金を株主総会の決議等で具体的に確定するのは翌期以降になり、それまで損金算入できないのは不都合であるので、支給額確定前に内定額を損金処理をすることもできるという緩和した取り扱いがなされている。したがって、控訴人が昭和五八事業年度において退職慰労金を損金計上したことは適法である。

二  土地譲渡益金の収入除外について

控訴人は、中島満寿から、昭和五七年九月三〇日現在少なくとも二〇八八万八四五八円の借入金債務を負担していた(甲第一〇号証の1、2)ところ、控訴人が昭和五七年一〇月以降住友銀行との取引を開始した際、同行から預金担保を要求されたので、控訴人は中島満寿に対し一旦同人からの借入金を返済して、これを同人名義の拘束性預金としたので、昭和五八年九月三〇日現在の中島満寿からの借入金は一〇〇万円ではある(同号証の3)が、実質的には二〇〇万円強の借入金債務があることになるうえ、当時退職慰労金債務一五〇〇万円の債務も負担していた。そこで、控訴人は中島満寿が北野から甲土地を購入するにあたり手付金四三〇万円及び売買代金二一九七万円を提供し立替払いしたものである。右立替金については、控訴人が中島満寿から乙土地を二二〇〇万円で買い受けた際に清算をし、中島満寿は受領すべき清算金を控訴人に貸し付けたので、昭和五九年九月三〇日現在の控訴人の中島満寿からの借入金は一二三四万六〇〇〇円となった(甲第一〇号証の4)のであって、土地譲渡益金は控訴人に帰属していない。

(被控訴人の認否)

控訴人の右各主張を争う。

第三証拠関係

原審及び当審の各証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

第四当裁判所の判断

当裁判所も、控訴人の請求はいずれも理由がないから棄却すべきものであると判断する。その理由は、次のとおり付加するほか、原判決事実及び理由欄の第三に記載のとおりであるからこれを引用する。

一  原判決二三頁七行目末尾の次に行を改めて「また、控訴人は、事業年度の途中で役員が退職した場合、退職金を株主総会の決議等で具体的に確定するのは翌期以降になり、それまで損金算入できないのは不都合であるので、支給額確定前に内定額を損金処理をすることもできるという緩和した取り扱いがなされているから、控訴人が昭和五八事業年度において退職慰労金を損金計上したことは適法である旨主張するが、右のような緩和した取り扱いがなされていることを認めうる証拠はなく、右主張は採用できない。」を加える。

二  同三一頁六行目末尾の次に「なお、控訴人は当審付加主張二のとおり土地譲渡益金は控訴人に帰属しない旨

主張し、甲第一〇号証の1ないし4、第一一号証、第一二号証の1、2、第一三号証を提出するが、これらも前記認定の事実に照らすと、控訴人主張の貸付金の存在を客観的に裏付けるものと認めるには足りないし、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。」を加える。

第五結論

よって、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡辺剛男 裁判官 菅英昇 裁判官 筏津順子)

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